PTAふれあいクリスマス会
2013年
12月21日(土) 午後10時〜
クリスマスコンサート
セロ弾きのゴーシュ (己斐さんによるシナリオ)
『チェロ弾きの先生』
【決定稿】
【出演】 キツネ(着ぐるみ)
【朗読】 己斐 みどり
【音楽】 チェロ 大前先生
ピアノ 西田先生
*語り部、音楽チーム 板付き
*語り部あいさつ
みなさん、おはようございます。
はじめまして、私は皆さんにお話しを聞いて頂こうと思ってやってきました己斐みどりと申します。
今日は大前先生、西田先生と一緒に「チェロ弾きの先生」というお話をしたいと思います。宮澤賢治の「セロ弾きのゴーシュ」には、猫 かっこう 狸 野ネズミたちが出てきますが、今から始まる「チェロ弾きの先生」には、猫もかっこうも狸も野ネズミも出てきません。 さあ、いったいどんな動物が出てくるのでしょうか?
お楽しみに・・・
*語り部椅子に座る
「チェロ弾きの先生」おはなしのはじまりはじまり〜
М はじまりの曲「白鳥」
あるところに、オーケストラのチェロ弾きの男がおりました。
チェロを弾くのは大好きなのですが、あまり上手ではなかったようで、いつも指揮者から怒られてばかりでした。
もうすぐクリスマスです。オーケストラは街の演奏会に出演することになっていました。
「ストップ! チェロ! また君か!・・・ダメだダメだ いい加減にしてくれないか! 演奏会はもうすぐなんだぞ!」
指揮者はイライラのしどうしです。
練習が終わると、男は大きなチェロを抱え、とぼとぼと帰るのでした。
家につくと、朝ご飯の残りの晩御飯を食べ、さっそくチェロの練習を始めました。
М チェロ練習
「あ〜 ダメだ〜 どうして うまく弾けないんだろう・・・よし、もう一回!」
男が何度も練習していると、誰かが扉を叩く音がします。
トントントン トントントン
「あのぅ お願いしますぅ えーと、あの・・・先生に大切なお願いがあってまいりました」
男が、少しだけ扉を開けると、その隙間から、スルリっと一匹のキツネが入ってきたのです。
*キツネ登場
「こんばんは! はじめまして。僕は裏のお山に住んでいるキツネです。
今日は、先生にどーしてもお願いしたいことがございましてやってまいりました!」
「キツネなんかが何の用だ! それに僕は先生なんかじゃないぞ!」
「まあまあ、そんなに怒らないでくださいな。
先生は毎日この大きな楽器で素敵な音楽を奏でてらっしゃる素晴らしい音楽の先生じゃあないですか。コォン! お願いと言いますのは・・
先生! 僕に音楽を教えてください! よろしくお願いしますコン!」
「何を言っているんだ! キツネに音楽を教えるだと! バカバカしい!
僕は、忙しいんだ! さあ、さっさと帰ってくれないか!」
「先生、お願いします! もうすぐキツネ小学校の音楽会があるんです。でも、僕、みんなとちっとも合わなくて、いっつもいっつも怒られてるんです。ですから、先生に音楽というものを教えて頂きたいんです!お願いします! お願いします・・・」
そう言われると、男は、キツネがなんだか自分と似てるような気がしてきたのでした。
「仕方ないな〜 じゃあ、今日だけだぞ。今日だけ特別に教えてやるから・・・」
「わ! ヤッター! 先生、ありがと! だいすきー! ヤッホー コーン!」
キツネは嬉しくて大騒ぎです。
「おい、キツネ、僕は忙しいんだからな、サッサとやるからチャッチャと覚えてトットと帰れよ!」
「はーい! 先生。よろしくお願いしますコーン!」
そして、チェロ弾きの男はキツネの音楽の先生になり、レッスンが始まりました。
「キツネ、では、まず、ドレミを言ってごらん」
「ドレミ??」
「おいおい、ドレミも知らないのか? 音楽の基礎の基礎だよ。いいかい。じゃあ、今からドレミを弾いてやるからな」
*チェロ、ドレミファソラシドと弾く
「これがドレミファソラシド。音階って言うんだ。つまり音の階段だな」
「ドレミパポラポラ? 」
「ポラポラじゃない!ドレミファソラシドだよ。音の階段は登ったり下りたりできるんだよ。じゃ もう一回上るよ」
*チェロ、ドレミファソラシド と弾く
「今度は下りるよ」
*チェロ、ドシラソファミレド と弾く
「登ったり、下りたり、スキップしたり、滑ったり・・・」
*色んな弾き方に合わせて、キツネ、表現する
「うはは・・先生、ドレミパポラポラっておもしろいね!」
「ドレミファソラシドだよ。そうだ! もっと簡単で楽しくドレミが覚えられるいい方法があるぞ! ドレミのうたで覚えたらいいよ」
「ドレミのうた? なにそれ?」
「いいかい、ドレミを自分の好きなものとくっつけちゃえばいいんだ。
ドはドーナツのド レはレモンのレ ミはみんなのミ ファはファイトのファ
ソはあおいそら ラはラッパのラ シはしあわせよ と、こんな感じさ」
「うわぁ なるほどね。 じゃあ ボクも「キツネのドレミのうた」を作ってみるコーン! えーと・・・
ドは・・・ドは・・どんぐりのド!
レは・・・レンコンのレ!
ミは・・・ミミズのミ!
ファは・・・ファは・・・う〜ん あくびがファ〜
ソは・・・そらまめのソ!
ラは・・・おならのラー!
シは・・・しっぽのシ!
わーい! 先生、できたよ! ぼくのドレミ!」
「じゃあ、それを音楽にのせて歌ってみよう! 」
「え〜 僕が歌うの? 出来るかな〜 そうだ!ねえ、おともだちも手伝ってくれないかな? 僕といっしょに「キツネのドレミ」歌ってくれる?
歌ってくれる人は手をあげて〜 はーい!
ありがと。
よおし、みんなと一緒なら歌えるような気がするよ。先生! キツネのドレミのうた、おねがいしますコーン!」
М ドレミのうた
♪ ドはどんぐりのド!
レはレンコンのレ!
ミはミミズのミ!
ファはあくびがファ〜
ソはそらまめのソ!
ラはおならのラー!
シはしっぽのシ! さあうたいましょ
「わあ! 出来た出来た! 先生、もう一回もう一回、
ねえ、みんな、今度はもっと大きな声で歌ってみようよ」
ドはどんぐりのド!
レはレンコンのレ!
ミはミミズのミ!
ファはあくびがファ〜
ソはそらまめのソ!
ラはおならのラー!
シはしっぽのシ! さあうたいましょ
キツネのドレミ〜
ドレミファソラシド ソ ド!
「ヤッター!先生とみんなのおかげでドレミが覚えられたよ! ね、先生、次は何を教えてくれるの?」
「キツネ!レッスンはこれで終わりだ。さ、約束通りとっとと帰ってくれないか! いいか、もう来るんじゃないぞ!」
「先生・・・」
*キツネはける
キツネは家から追い出されてしまいました。
次の日もまた、男は指揮者に怒られて、ぐったり疲れて家に帰り、チェロの練習をしていると・・・
トントントン トントントン
昨日のキツネが、ふら〜っと入ってきました。
*キツネ登場し、ふらふらとへたりこむ
「コラ! またお前か! もう来るなと言っただろ・・・」
「せんせい〜 明日はいよいよ音楽会なんです。 練習したとおりにちゃんとできるかどうか心配で心配で、ドキドキドキドキして眠れないんです。ですから、このキツネのためにブラームスの子守歌を弾いてくれませんか?」
すると、男は真っ赤になって怒り出しました。
「なんだとキツネ! 眠れないからブラームスの子守歌を弾けだと?
よおし、お前にはこの曲を聞かせてやる!」
そう言うと男は、子守歌とは全く違う曲を乱暴に弾きだしたのです。
М 激しい曲「インドの虎狩り」風
「わ〜 やめて〜 先生、耳が痛いよ! 頭が割れそうだよ! もうやめてってば!
助けてコーン!」
*キツネ はける
キツネは逃げるように出て行ってしまいました。
それから数日が経ち、とうとう演奏会本番のクリスマスの日がやってきました。
演奏会は、大成功し、会場は大きな拍手に包まれました。
そして、アンコールに指名されたのは、なんとチェロ弾きの男だったのです。
「アンコールと言ったって、僕一人でいったい何を弾いたらいいんだ」と思ったとき、ふと、キツネの顔が浮かびました。
「そうか、演奏会が成功したのはキツネのおかげだったんだ。キツネ、君のおかげで、僕はやっとチェロ弾きの先生になれた気がするよ。ありがとう!」
男は、キツネのことを思い、チェロを弾き始めました。
М 優しい曲
キツネが初めて家に来て音楽を教えてほしいとお願された時のこと、ドレミの歌を歌って嬉しそう笑った顔、そして、大きな音を出してびっくりさせてしまったこと。そんなことが次々と思い浮かんできて男は胸がいっぱいになりました。
その晩
男は、キツネにお詫びとお礼がしたくてご馳走を用意してキツネが来るのを待っていました。
「よおし、キツネが来たら、まず乾杯して、チキンを食べて、ケーキを食べて、それから・・・それから、キツネの大好きな曲、何でも弾いてやろう! あ、そういえば、ブラームスの子守歌を弾いてほしいって言ってたな・・・あのときは、わざとうるさい曲を弾いて追い出してしまって悪かったな〜 あぁ、僕はなんてひどいことをしてしまったんだろう。キツネ〜 ごめんよ! 早く来ておくれよ!」
ところが、男の家にキツネが現れることは、ありませんでした。
月日は流れ、山にも春がやってきました。
М 優しくあたたかい終わりの曲(エルガー「愛の挨拶」など)
男が、どんぐりの木の下でチェロを弾いていると、大きな葉っぱが落ちてきました。
それは・・・キツネからの葉っぱの手紙でした。
「チェロ弾きの先生へ
先生、お元気ですか? ボクは今、とても遠いところにいます。先生、クリスマスの演奏会はどうでしたか? ボクはキツネ小学校の音楽会で拍手をいっぱいいっぱいもらいましたよ。先生のおかげです。
ボクも今、小さなキツネたちに「音楽」を教えています。「キツネのドレミ」はかなりウケています。
ねえ先生、ボクは音楽が大好きです。それを教えてくれた先生のことも大大大好きです。ずっとずっとチェロ弾きの先生でいてください。
先生、ありがとう。いつか きっと また会えると信じています。
キツネ」
男は葉っぱの手紙を そっと胸に抱きしめました。
春風が 濡れた男の頬をふんわりとなでていきました。
「チェロ弾きの先生」のおはなしは これでおしまいです。
