これからの日本のものづくり(人とモノと生活)
昭和、平成、令和と弊社は日本のもの作りの見てきました。そして我々は単に想像力だけで描く未来ではなく、これまで長い歴史の中での人・モノの関わりから未来を考えています。それは単に伝統工芸と言うのではなく、これまで先人達が考え、工夫して作り上げてきた多くの思考と創造性を今(現在)に再生し受け継ぎながら、これから未来の日本のもの作りの本質を探求する長い旅の続きであります。
職人からのメッセージ「本物とはなんだろう・・・?」
「本物とは何だろう・・・」。この疑問に向かい合ったのは、コロナが世界を席巻し、まるで全世界が静止したような印象さえ受けた2020年から2021年にかけて、京都西陣や京丹後の織物業者はまるで氷河期を思わせる苦境に立っていました。多くの人々がそうであったように長年伝統を支えてきた技術者や職人が高齢者を中心に廃業や引退で姿を消していったのです。
そんな時期に日本海を臨む、とある漁村で、長い間この地域の職人達を支えてきた技術者の親方が引退を決意されました。その人物はこの地域では100人にも及ぶ職人達に慕われ尊敬を受けておられました。その方が引退時に、こう言ってその長い技術者生活に幕を下ろされたのです。
「本物のわかる人がいなくなっていく」
「本物」・・・?はたして「本物とは、なんだろう・・・」、単純だが簡単に答えられない深い意味がこめられていました
最後の恐竜からの提言
もの作りに大切なのは「本物であること!」

もの作りにおいて、大切な事とは何でしょう・・・、先の例によれば「本物」である事がなによりであると思われます。しかしこの「本物」という言葉には一言で表せないほどの広がりと奥深さがあります。
2024年、我々は大阪の中学校において伝統工芸士による職場体験や伝統工芸についての授業を行いました。その席で私達は若い子供達に「本物とは何だろう・・・?」と問いかけてみたのです。さまざまな感想や意見が湧き出た中、私達は、こう締めくくりました。
「今は分からなくても、その答えをずっと探してみてください」それがいずれ貴方達を本物へと導いてくれるはずですから・・・。
日本のもの作りが斜陽産業の例えとして挙げられる現代に、先人達の言葉に、「我々(職人)は、いずれ姿を消す恐竜のようなものだ」と遺言されても私たちはかつての職人達の精神を忘れるわけにはいけません。確かに高度経済成長期、日本は技術国として世界に知られるようになりました。世界がグローバル化に伴ってより互いの距離感が縮まる中でいつしか日本のもの作りも大きな転換期を迎えています。しかし私達は先人達が残した知恵と思いを絶やしてはならない気がします。「本物を探せ!」それは形を変えて新しく生まれくる新たな職人達への道しるべになるはずです。
『真・技・考・智』若者達への提言
2025年、弊社には20代から30代の4人の女性職人達がいます。育ちも出身地も異なるこれら新世紀の職人の卵達は、昭和生まれの私達と違って真面目で優秀であります。その若い職人達に職人としての心得「真・技・考・智」を伝えています。
「真」とは、真理または原理へのあくなき追求のことです。我々職人はその技術の遣り方だけをコピーするのではなく、そこに秘められた原理や真理への追求を忘れてはなりません。
「技」とは、技術への精進を絶えず持ち続けることです。いわやる技術屋としての真髄はこれいかんによります。
「考」とは、どんな難問にも考察を持って答えを導き出せる自信と確信を抱く事です。真理の追究も、技術の鍛錬も、何も考えないのでは意味を成しえません
「智」とは、知恵の就学に純粋な心で望めること。人間として、この宇宙にある万物に対して、敬意を持って受け入れられる事を意味します。

代表取締役・伝統工芸士 脇 浩史